カニ味噌は父との思い出の味
私にはカニというと幼い頃のある記憶が蘇ります。それは丸ごと一匹のカニが手に入った時、そのカニ味噌がたっぷり詰まった甲羅に日本酒を注いで、父がよくおいしそうに飲んでいた記憶です。幼い私でもカニ味噌が特別なものだということは知っており、それを食べることのできるのは父だけで、やっぱり父というものは偉いんだなと幼心に感じていたものです。
ただだからといって私の父は亭主関白の頑固者というわけではなく、カニ味噌を食べることができるということが大人なんだなと私が勝手に思っていたのです。そして時折父にカニ味噌を私の口に入れてもらうことがあり、幼い私には何となくこれが大人の味なんだなと感じ、でもやっぱりカニの身のほうがおいしいじゃないかと思っていました。
幼い頃にはカニ味噌の味など分かるわけがありません。そして大人になった今、私もカニ味噌のおいしさというのが分かってきました。
そのため今ではカニ味噌を食べると父親に口に入れてもらっていた頃のことを思い出すのです。
そして今では父親と一緒のカニ味噌を味わい、二人で舌鼓を打っています。
ただ残念ながらカニ味噌など滅多に食べることができないのですが、滅多にないことだからこそ私にとって思い出の味になるのかもしれません。
